こんばんは自称バームクーヘンです。
今回は『劇場版テレクラキャノンボール2013』の感想について書きたいと思います。
まずは見てない人に向けてネタバレしてない感想、途中からはネタバレを含む感想を書きます。
まずはこの作品、アダルトビデオのシリーズとして1997年から何作かあります。
『劇場版テレクラキャノンボール2013』(以下 テレキャノ)はそれの劇場版、つまりは完全なるAVじゃなく映画として公開されたものです。
予定では6日間だけ公開されるはずでしたが、口コミが広まり瞬く間に一大ムーブメントとして盛り上がりました。
公開当初、トークショーも行われ雨宮まみさん、『童貞を。プロデュース』の松江監督、宮台真司さん、バッファロー吾郎Aさんなどがゲストとして呼ばれました。
その後、バッファロー吾郎から後輩のナイナイ岡村さんに10時間版のDVDが渡されたみたいです。(後にめちゃイケでテレキャノのパロディが制作される)
また、クイズ☆タレント名鑑、水曜日のダウンタウンなどを担当する藤井健太郎pが企画し、TBSでは芸人キャノンボールが制作されました。
こんな感じでですね、他業種を巻き込むくらいテレキャノ2013はムーブメントを起こしたのです。
そもそもAV監督が映画を作ること自体が業種の枠組みを超えた話なので映像を作る、様々な業種に''感染''してくのも頷けます。
ーテレクラキャノンボール2013のルールー
改めてそもそものテレキャノとはなんなのか説明いたします。軽ーく。
まず、キャノンボールとは車やバイクを使った非公認の長距離レースです。
この映画オススメ!
なのでテレキャノでも出場者は車やバイクに乗り、仙台、そして札幌まで競い合います。
んで、んでよ、テレクラキャノンボールのテレクラとは?
まああのテレクラですね。
個室に電話があり(基本的に)女性から電話がくるのを待ち、会話する場所です。まあその後デートしたり、セックスしたり、みたいなそのきっかけを掴む場所です。
テレキャノはそれを融合したレースです。
つまりは簡単に言うと如何にゴールするまでにセックスするか、また変わったプレイをしてポイントを稼ぐかなんですね。
ポイントってのはただ早くゴールすりゃいいってもんじゃなくて、例えば相手の女性が顔出しOKなら+ポイントとか加算されていきます。
(このポイントがめちゃくちゃ細かい!)
そしてこのポイントがレースの勝敗を決めます。
テレキャノにおいてはレースよりセックス、それに伴うポイント合戦がメインになります。
形態はレースやけど、元がアダルトビデオなのでね。劇場版でもおそらく3分の1くらいはセックスシーンです。
で、参加者はAV監督、カンパニー松尾さん、バクシーシ山下さんなどなど、の6人です。
優勝すればAV女優2人と寝れるってわけです。
さてさて、僕がこの映画を初めて見たのは1年半ほど前でした。
見たときは衝撃でしてね、なんか心に残るけど同時にとても胸糞が悪くもある。
この映画は+100点と−100点が同じくらいあると思います。それについて書いてきます。
(まだネタバレしませんが、ここから気分を害す恐れのある内容に入ります。)
まず、構造的に都会に住む男(プロのAV監督)で競われるレースで、いかに地方の素人女性を抱くか、そしてセックスする女性においても例えば40代はマイナスポイントだったり、その人を評価するわけです。
んで、一人一人が1日のうちでハメ撮りしてきたビデオを公開し、判定する会議のシーンでは仲間内で笑ったりします。
さらに優勝すれば綺麗な女性2人を抱ける。
そういう構造になってるんですよ。
なので、はっきりいってテレキャノはかなーり胸糞悪い映画です。僕個人としても手放しで絶賛できる映画では全くないです。
この映画が完全なる女性蔑視の上で成り立っていることは間違いありません。
感想書く前にそれは言うときます。
また、監督のカンパニー松尾さん自身も作家湯山玲子さんとの対談で「賛否があって当然」ともおっしゃっていました。
実は劇場版に編集する際に、セックスする前の女性との会話を少なくしたり、何故女性もこの映画に出る決意をしたのかという部分が劇場版では映画の尺の問題で切り落とされたため、劇場版テレクラキャノンボールがブラックな内容になってしまったそうです。
10時間版のテレキャノはバランスが取れているそうな。
まあそれでも2時間ちょっとの劇場版テレキャノの構造的欠陥は間違いないと思います。
ただですね、テレキャノは男性のそういういやーーな側面を物凄いはっきりと見せているんですよ。作品として本来なら隠す部分を正直に見せている。それは倫理的欠陥にもなりますが、リアルを写すドキュメンタリーとしては逆に嘘が無く凄いことやと思います。
それもドキュメンタリー映画監督じゃなくて、AV監督がドキュメンタリーを撮ったからでしょう。
その異質感、ゲテモノ映画やけどその嘘の無さがね見てて凄いんですよ。
さらには劇中では純粋な愛が一部見れる側面もありましてね、嘘だらけの世の中で正直なゲテモノ映画が、愛を見せてくれる瞬間があるんですよ。生きるとはなんなのか?人生ってなんなのか?その問いにも、この素晴らしきゲテモノ映画は1つの答えを導いてくれます。
僕も見てる最中に胸糞悪!て何回も思いましたが、最後には何故か泣いてました。
なぜこのゲテモノ映画で泣けるのか?
なぜ?
(ここからネタバレありの感想に入ります)
ー素人女性たちー
改めまして、テレキャノは男性の愚かな面を全面に見せる素直さと滑稽さがあります。
''非日常''に生きるAV監督と素人女性の''日常''が交わる瞬間をこれでもかと見せられます。
そこにカルトが生まれるわけですが、そんな瞬間なかなか見れないです。
この映画はその瞬間、カルトな世界を見せてくれるわけです。
出演する素人女性にもそれぞれの人生があり、「この出演が人生のターニングポイントになった」と語る女性もいました。
そしておちゃらけて明るいギャル風な女性(前半の方でバクシーシ山下さんと3pした人)はこれまでの人生を語ってくれました。
「ウケる」が口癖の彼女は成長する過程で受けた暴力などを語り、最後に「失うもんなんかもうねえよw」と半分笑いながら言いました。
彼女が自分のセックス、それも友人と山下さんとの3pというカルトな空間で撮られたものを映画として記録されることを了承する。
それは人間の証明のようでした。
テレキャノがただのエロ映画ではなく、ドキュメンタリー映画とされる理由がわかります。
彼女以外にもそれぞれ人生があり、セックス以外の部分が映し出されます。
カメラを向ければその人はその人を演じてしまうと言いますが、だからこそ、その人は本来の思考や人生の歩みを語り、本性が丸裸になっていきます。
プロのAV監督はセックスもその人の全部もカメラに抑えていくんですよ。
ケタケタ笑う悪ーい面もありますが、そういうプロとしてカメラを持ったときの姿勢にはプロたる所以を感じました。
男たちはテレキャノでポイントを稼ぐためにセックスを持ちかけますが、それに答える女性は何を想い映画に出ることを了承するのか。
普段はふつうに接してるような感じの人たちもいっぱい出てきます。
ドキュメンタリー映画として、ゲテモノ映画ですがそこには余りにも生々しいリアルが映し出されます。
ー監督たちー
6人のAV監督にはそれぞれ個性があり、良さがありました。特にビーバップみのるさんは何も考えてないようでほんとに何も考えてない感じがよくてね、でも謎に言うことやセックスに対しての姿勢がかっこよかったりするんですよ。
テレキャノでの名言そして迷言である「ウンコ食う人生か食わない人生かなら食う人生を選ぶ」だったりね。
みのるさんは途中から採用されたウンコポイント(女性のウンコを食べれば3ポイント加算)のせいで、カン松さんに負けてしまうんです。
自分はレースで女性のウンコを食えなかった。そして負けた。それを認めて最後に新潟へ向かうフェリーで彼は新潟行きのフェリーに同行したりんちゃんのウンコを食べたんです。
ちょっと待ってください、僕も暑くなりましまが冷静に考えて彼はウンコを食べたんです。やあらへん。
見ていて頭がおかしいけど、当の本人たちは物凄い真剣にしてるっていう可笑しさがね、面白いんですよ。しかも本人たちが勝手に話して決めたいわば悪ノリみたいなもんです。
やけど、それが劇中でかなり肝になってくるんですよ。
んで、ウンコ食うことと人生を結び付けて熱く語るわけです。すげえドキュメンタリー。
ウンコを食べるか食べないかの人生、食べない選択をした結果負けたと。
そしてそんな自分を食ってかかるために、人のウンコを食べて成長する。
なんなんですかこの映画は!すごい世界!
僕はちゃんと見るとキモち悪いんで食うシーンは目を細めて見ました。
レースが終わり、レースのゴールは終わりましたが監督たちそれぞれのゴールが残されてるわけですね。
ビーバップみのるさんは食う人生を選び、バクシーシ山下さんは賞品を楽しみます。
そして監督のカンパニー松尾さんは新潟行きのフェリーである2人のことを考えていました。
それはレース参加者の嵐山みちるさん
と、賞品ガールとしてテレキャノに招待されたAV女優神谷まゆさんです。
みちるさんはレース中に事故りかけ、そこから神谷まゆさんに貰った御守りを車に付けて走っていました。
そもそもみちるさんは当時h.m.pの専属監督で神谷まゆさんはh.m.pの専属女優でした。なので監督と出演者であったのですが一度も絡み(セックス)はなく、でも近い存在やったんですね。
で、神谷まゆさんから御守りを貰ってそれをみちるさんがつけてレースに挑むと。
カンパニー松尾さんからみちるさんが御守りを付けてたことを聞いた神谷まゆさんは泣いてしまいます。
カンパニー松尾さんも号泣しだしてね、急に純愛映画になるんですよ。
純愛をハメ撮りという形でまた記録します。
神谷まゆさんがとても良くてね、素人女性の方々はもちろん、彼女もこの映画になくてはならない存在でした。
ー神谷まゆさん、その後、ー
そしてみちるさんとのハメ撮りを終え、テレキャノ後にもう一本撮った後で彼女はAV女優をやめました。
みちるさんとのハメ撮りを終えた彼女は笑顔でね、光ってたんですよ。
AV女優をやめてしまったけど、そのときの笑顔は記録されてるわけです。
永遠なんて嘘っぽいですけど、嘘だらけのこの世の中で存在するこのゲテモノ映画はそういう嘘を排除し、人間の証明や出演した女性の一瞬の表情や人生を記録し、元AV女優神谷まゆさんの笑顔も映画という形で保存しました。
たとえば100年変わらない笑顔もこの作品が100年残れば本当になるわけでね、嘘が本当になるんですよ。
ー素晴らしきゲテモノ映画のテレキャノー
非日常と日常が混ざり合い、人間の愛も汚さも全部見せるほど正直で、そこに嘘がないテレキャノは、出演した監督たち女性たちのそれぞれの人生やゴールも丸裸にして見せてくれました。
最初書いたみたいにこの映画は構造的欠陥のある作品ですが、ドキュメンタリー映画として面白くてなんだか心に残る要素もあります。
素晴らしきゲテモノ映画なわけですよ。
僕は『劇場版 テレクラキャノンボール2013』を知ってる人生か、知らない人生かなら知ってる人生を選びます
はい、おわり
ちなみに派生作品としてこんな映画もあります。
『劇場版BiSキャノンボール2014』
公開中『劇場版 アイドルキャノンボール2017』