ぼんくら解体新書

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『mid90s』誰にでもある"あの頃"

こんばんは自称バームクーヘンです。

今回は映画『mid90s』について書きます。

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さて、この映画、製作会社はA24
最近では『エクス・マキナ』、『room』、『パーティーで女の子に話しかけるには』、『ミッドサマー』などを製作したスタジオです。

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そんなA24がアメリカで2018年に公開したのが『mid90s』

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本作は2年越しの日本での公開なんですねえ。
監督はジョナ・ヒルさん、監督としては『mid90s』が処女作でございます。
主人公は『聖なる鹿殺し』に子役で出演しているサニー・スリッチ。
スケートボーダ―兼子役みたいです。めちゃめちゃいい子役やと思いましたですね。
あのルックスでスケートボーダーって!かっこいい。。

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で、その主人公の兄貴役のルーカス・ヘッジズさんは『スリービルボード』『ある少年の告白』『WAVES』など複数の作品に出演している役者さんです。

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さてさて、

『mid90s』ざっくりあらすじ※ネタバレなし※

1990年代ロサンゼルスが舞台の青春映画。
13歳の主人公の思春期の葛藤、親との関係・お兄ちゃんとの関係、友人との関係を描いた物語。
そんなフラストレーションが爆裂する時期に自分の好きなもの(スケートボード)に、主体的に関わっていく姿も描いております。

 

ではここから感想ですが、あまりネタバレうんぬんの映画ではないと思いますのでマジでネタバレしたくない方以外は見ていない人にもオススメしたいため、全部は言わない程度に書きたいと思います。

 

 

それでは、

~誰しもが抱える”あの頃”~

この映画はすごく音楽とマッチしていて、1990年代ド真ん中の人はかなり惹かれると思います。
だけれども、ど真ん中じゃなくてもなぜかこの映画に懐かしさを感じてしまう。
それは何故か。おそらくそれは10代の頃の苦い思い出や淡い思い出、楽しかった思い出がふんだんに描かれるからだと思います。しかもそれがBGMと共に描かれる。
兄弟喧嘩、自我との葛藤、好きなものができたとき、恋愛、友人、家族、いずれかには誰しも何かしら良くも悪くも10代に思い入れがあると思います。
『mid90s』はそのあたりを描いているんですよ。

郷愁が感じれるというか、エモーショナルな雰囲気がずっと漂っている映画なんです。
個人的に一番惹かれたシーンは主人公が(おそらく)初めてスケートボード屋さんに入るところでした。

あるーーーーー!!好きなものに飛び込む瞬間!あるーー!

少し緊張しながらスケートボード屋さんに入るんですよ、一人で。
これ、例えば初めて映画館に一人で行くとき、ライブに行くとき、初めてCD買ったとき、誰しも1回は好きなものに飛び込む経験はあるかと思います。あのシーン好きやわあ。

主人公はそこ(スケートボード屋さん)で年齢も人種もバラバラだけれども好きなもので繋がったコミュニティと出会い、交じります。

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なにがあっても集まれるコミュニティがあるのは良いですよね。
この映画が惹かれる要因の一つにコミュニティの存在があると思います。

 

 

~共同体の存在~

好きなもので繋がっている『mid90s』の少年たち。
劇中、いくつかのシーンで大きな公園でたむろしたり、スケートボードをするのですが、主人公がいるコミュニティとは別に、いくつも同じような少年少女の姿が写ります。
それぞれのコミュニティがあるとそこで分かります。
主人公らはスケートボードで繋がり、その他の少年少女らは劇中では描かれておりませんが、例えば音楽で繋がったり、別の趣味で繋がったりしているでしょう。
そんな10代が集まる居場所が1990年代にはありました。

思えばそういうコミュニティがたくさん集まり、大きなコミュニティを形成できる居場所ってどんどん減ってきているように感じます。


てんでばらばらに見えても実は大きな共同体として機能していた大きな公園。
互いに親や学校、兄弟の不満をさらけだし、好きのもので昇華していく。そんな姿が描かれます。
映画を見ている側は、最近では失われてきた大きな共同体を見て、惹かれるのかもしれません。

登場人物それぞれ家庭の事情や人種が故の差別を抱え、生きていく。
バラバラの彼らがスケートボードという”好きなもの”を通して繋がるわけですねえ。
おもしろい。
さらにそこでぶつかって新たな関係ができたりする。


おもしろいのは彼らがスケートボードで建物と建物の間を飛べるかどうかというキケンな遊びをするシーンがあるのですが、あれはフラストレーションをこのまま溜めるか、一線を越えて昇華するかという人生のターニングポイントになっていると思います。

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本当に飛び越えられるかではなく、飛び込むかそのままでいるかなんですよ。
あのシーンから主人公は次第にヒトやモノの見方が変わっていきます。
お兄ちゃんに対しても、母親に対しても、好きなものに対しても。

そして簡単に言うと主人公はグレていくのですが、完全に家族と縁を切るわけでもない。
母親やお兄ちゃんに反抗しても、スケートボードで発散できる。
発散できる好きものを獲得できたわけですね、建物の間を飛び越えるチャレンジをしてから。

たまーに描かれるのですが主人公の自傷行為はそれまでの自分、以前の自分をぶっ壊している描写だと思いました。
生まれ変わりというか、『ファイトクラブ』の主人公が自分で自分を殴ったり、銃で自分を撃ったりするのと近しいものがあると感じました。
過去からの脱却という、直接的な表現なんだと思います。

 

そして、例え以前と違っても、家族というコミュニティも主人公にはあるわけでそのコミュニティも主人公にとっては必要なわけですよ。
反抗はしますが、家族も大事なわけです。
だから、お兄ちゃんが主人公のスケートボード仲間に出会ったときに苦い顔(来るなよ)ていうようなある種の防御反応、お兄ちゃんはあのお兄ちゃんのままでいてほしいというような顔をするんです。
家族が友達にカラまれてるのなんて誰だってみたくないですからね。

 

お家でけんかしても、次のシーンでは2人はゲームをしている。

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このシーンもすげえ好きでした。


これ、どっちかが「一緒にしよう」って言ったかもしくは毎日の恒例やから一緒にしているわけですからね。
おもしろい、良い関係です。

 

主人公と友達との関係も月日が経つにつれて変わっていきます。
友達というか兄さん的存在の2人がだんだんと対極な関係になっていって主人公はどっちにも惹かれるし、どっちにも着いていこうとするところとか。。

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そういうの、あるわ~~~~~。

 

夕日のシーンも詩情にあふれていた。


この映画は多くを語らないからこそ存分に想像させてくれます。
非常におもしろい。


ラスト付近も良かったですね。

10代の少年少女があるきっかけから落ちていく姿を見せる映画はよくありますが、別にそうもならない。
この映画を見るまでは、そういう映画(あるきっかけで少年少女が落ちていく物語)はわりと現実的でおもしろいと思ってましたが、『mid90s』を見てからはそういう映画(落ちてく映画)も好きですよ、好きですけども、世界観として、現実って自分が思っているより純粋やし、自分が気付かないだけで日常は詩情やエモーショナルがあふれているんじゃね?て思います。

 

心が浄化される映画ですよ『mid90s』は。


まだ見ていない方は是非見て頂きたい作品でした。

以上、最後まで読んでいただきありがとうございました。

 


ps.

ちなみに僕はこの映画を見てからというものの、スケートボードがしたくてたまらない!
だけど、映画の登場人物みたいにかっこよく滑れるのか?

いや、そういう気持ちを乗り越えておれも飛び越えたい!
『mid90s』の登場人物みたいに。。

スケボーかっこええわあ。


あと劇中歌良かったわあ。

特にpixiesのWave Of Mutilationね。

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おわり